将棋初心者でも楽しめる、ミステリー。柚月裕子「盤上の向日葵」読まなきゃ損!
盤上の向日葵 柚月裕子さんの長編ミステリーは、面白いです。
柚月裕子さんの作品は、まずハズレがありません。
そして、色々な題材を書ける所が凄いと思います。
今まで面白かったオススメ作品は、「孤高の血」「最後の証人」「パレートの誤算」「蟻の菜園〜アントガーデン〜」です。
どれも全く違った題材でありますが、面白くて一気読みしました。よく調べているなと感心します。
この「盤上の向日葵」も、分厚い本ですが一気読みでした。
主人公の上条圭介は、暗い過去を背負っています。
母が早くに亡くなり、父は麻雀とお酒に溺れて碌に子供にご飯も与えず、圭介を虐待していました。
諏訪で過ごした時代の事です。
幼い圭介はその様な中で、独学で将棋を学びます。そしてある出会いが、圭介を成功へと導いてくれました。
やがて圭介は社長となりますが、実業界から突如引退して将棋界へ転身をします。
奨励会を経ずに 「炎の棋士」の異名を持つプロ棋士となり、テレビにも出る有名人になります。
一方、天木山では白骨化した遺体が発見されました。遺体と共に、将棋の駒も発見されました。
その駒は、初代菊水月作のもので600万円の価値があるとわかります。
第1章では、この駒をたよりに埼玉県警の刑事が事件を追っていきます。
第2章と第4章では、圭介が新聞配達をしていた小学校3年生の時に、将棋雑誌の事で唐沢と知り合った話です。
子供が何と、中級の将棋をさせたのでした。この出会いこそが、圭介を救ってくれて将棋の道へと導いてくれたのです。
第6章以降は、圭介の母親の真相がわかったり、駒の行方をどんどん突き止めていきます!
圭介は父から碌に食事を与えてもらえませんでしたが、ある時あめ玉をもらった時の嬉しそうな顔は、胸につきささりました。
腐っても父親だなんて。こんなに酷いことをされているのに、あめ玉一つで子供をつなぎとめるなんて。
むなしいです。
やがて圭介は東大にうかり、東京で暮らし始めます。
「母の面影を辿ると、最後は向日葵にりつく。
ゴッホが描いた向日葵は、亡き母そのものだった。」ゴッホの向日葵は、仄暗かったり筆のタッチに圭介は魅了されたとありますが、これがタイトルや母親と結びついていたのですね。
将棋の対戦を様々な場所でやるうちに、知り合いも増えていきます。
家にそのうちの一人、賭け将棋で飯を食う「真剣師」東明重慶を泊める事になります。
その時、あの価値のある将棋の駒を、圭介が持ってる事を知られてしまうのです。
東北に東明と旅に出た圭介は、将棋勝負の世界の厳しさを肌で感じ取るという、貴重な経験をしました。
しかし将棋の駒を売られてしまい、お金で買い取るはずだったのに持ち逃げされるという、何とも信じがたい事件が起こります。
第11章からは、目が離せません。スピーディーな展開や、将棋の対局をドキドキしてまるで自分がさしているかのような錯覚にとらわれて、面白いです。
私は将棋の事はまるでわかりません。そんな私が面白いと思いました。
さて父親との確執も、一体どうなるのでしょうか!
最初の遺体と発見された駒の謎が、いよいよ解けるのです。
これは読まない手はありませんよ。
読み応え抜群のこの小説、オススメです!
第15回本屋大賞で第2位にランクイン。
2019年9月8日BSプレミアムにて全4回放送予定。
必見ですね!