うきわねこ 2011年絵本屋さん大賞受賞作品
うきわねこ 蜂飼耳 文・牧野千穂 絵
優しいタッチの絵が、心惹かれます。
日曜日のお昼に、おかかおにぎりを食べているこねこちゃんのえびお。
玄関には宅配便。「えびお おじいちゃんからよ」今日はえびおの誕生日、
「あら、うきわだわ」「浮き輪って何?」今度はお父さんが答えます。「水にうかぶんだよ。これにのってね。」
どうして浮き輪なんてくれたのでしょうか。海も川もプールもありません。
箱の中には手紙も入っていました。えびおは二人には内緒でポケットに入れます。
「特別な浮き輪です、次の満月の夜を楽しみにしていてください。それまで大事にね」と。
次の日、浮き輪を膨らまして、体を通したままおもてへ飛び出します。
「貸して」
大きな木のかげで、空気をぬきました。満月の夜までかくしておこう。
それから、毎日のように空をみあげます。
やっと満月の夜。お母さんとお父さんがぐっすり眠ってからベッドを抜け出します。
空気をどんどんいれます。
ぱんぱんにふくらんで、えびおはベランダにでてみました。
その時です。両足がぶらんと宙に浮いたのです。
まるで月に引き寄せられるようです。
名前を呼ばれてみると、別の浮き輪がとんでいます。
なんとおじいちゃんではありませんか。
「よく来たね」
空では、翼のある恐竜とすれちがったり、ヘリコプターとすれちがったり。
「海だ」「ぼく、はじめてだな」
釣りをします。
釣れたのは、みたこともない大きな魚です。
浜へ引っ張り上げて、焚火をします、「いただきます」
「えびお、こんばんのこと ずうっと忘れないでいるんだよ。大きくなっても忘れないでね」
「この浮き輪は、明日から普通の浮き輪になってしまうよ。一度しか飛べないんだ」
えびおは、おじいちゃんと空の上でわかれました。
家に入ると、浮き輪はしぼみました。
それから、とても幸せな気持ちでベッドにもぐりこみました。
最後のページの、すやすやと幸せそうに眠るこねこのえびおが、印象的でした。
ファンタジーあふれるこの作品。
ぜひ、おススメですよ。