癖がなくて読みやすい。出会う人々を丁寧に描く小野寺忠宜3選!
小野寺さんの小説は、どれも違った味わいがあって最近好きになった作家さんです。
その中から、毛色の違う作品をご紹介します。どれも、読み応えのあるものばかり。
読まない手はありませんよ。
1.みつばの郵便屋さん
主人公が、みつば・四葉地区の郵便配達員の平本秋宏。兄は、春行と言い芸能人で彼女も芸能人。芸能人同士だから、密会場所は決まって主人公の部屋です。
合鍵を兄に渡しているという変わった兄弟。顔がそっくりな一歳ちがいであるので、芸能人の兄に似ているとよく声をかけられてしまいます。
そんな中で、よくこの主人公は卑屈にならずに兄弟仲良くいられるなと、感じました。
この話を読むと、郵便配達員の日常が垣間見れます。やはり、大変な仕事です。ミスは許されないし、寒くても暑くても配達しないといけないから、本当にすごいなと思います。
この話は配達先で出会う人々や休憩に立ち寄る公園で見かける人との、交流を描いたものでさらっと読めてほのぼのできます。
そして、気持ちがほんわかするのです。日常の中で、ささいな幸せを見つけたい方に、ぜひ読んでほしい一冊です。
2.片見里、二代目坊主と装飾男子の不器用リベンジ
父が他界し、急に住職になった坊主の徳弥。そしてその寺に父の遺骨を引き取るため、昔4か月だけ済んだ片見里市に戻ってきた一時。
二人が再開した所から、話が始まります。
クラスのマドンナだった美和が、数年前に自殺してしまいました。同級生達は、皆衝撃を受けます。
そしてその原因はわからないのだそう。調べていくうちに、次々と明らかになっていく驚きの事実。
遺品整理の時に美和のパソコンは、なぜなくなったのか。別れさせ屋って何?妊娠、市議会議員の選挙はどのように絡んでいくのか。果たして自殺の真相とは?
徳弥と一時が死の真相にせまっていきます。目が離せませんよ。
3.ひりつく夜の音
面白くて、一気読みしました。音楽好きにはたまらない一冊。
46歳の下田保幸の仕事は、クラリネット奏者。井村勝とロンサム・ハーツという有名なジャズバンドにいたのでした。
ある日、警察から佐久間音矢の引き取りをとしてほしいと、電話がかかってきます。一体誰でしょう?音矢という名前。
そうだ!大昔、つきあっていた佐久間留美と子供ができたら、そんな名前を付けたいと言った事を思い出し、保幸は引き取りに行きました。
音矢は、22歳でまっすぐな人です。まっすぐすぎて例えば左側通行をしているから、前から歩きスマホをしている人とぶつかりそうになっても、絶対によけないという信念を持つ、変わった人。
そうだから、トラブルが起こりやすいのです。音矢について調べると、なんとギタリストとしてかなり有名で、人気のロックバンドをやめたばかりだという事がわかってきました。
下田を取り巻く日常や、仕事仲間たち。そして、ひょんな事から知り合った音矢。
さて音矢との関係はいかに!ほっこりする人間模様と音楽が混ざり合い、読み応えのある小説です。
私は音楽の道に進みたいと思ってた時期があったので、これを読むとその道を進めばよかったなと、感じてしまいました。
そして、音楽を追求する音矢や保幸を、とてつもなく羨ましく思います。
音楽に興味のある人には、ぜひ読んでほしい。ですが、音楽に興味がなくても楽しめる本です。
私がこの作者の小説の中で、一番好きな本ですので自信を持ってオススメします。読まないと損ですよ。